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経理業務の効率化|上場企業・グローバル企業のための実践ガイド

アウトソーシング

2025/08/28

経理業務の効率化|上場企業・グローバル企業のための実践ガイド

上場企業やその連結子会社・関連会社では、経理の遅れやばらつきが連鎖して、経営の意思決定にまで影響します。本記事は「経理業務の効率化」をキーワードに、国内外で事業を展開する企業が、今日から実践できる具体策を網羅的に整理しました。最後に、実行を一気に前進させるBPO(業務委託)の選択肢としてマルチブックアウトソーシングもご紹介します。

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国内外の経理業務でよくある非効率

経理業務のボトルネックは、毎月の締めで同じ場所に現れます。証憑の散在、拠点ごとのルールの違い、手作業による入金消込、タイムゾーンや言語差による確認待ち時間——これらは国内外を問わず発生し、連結や監査にも影響します。まずは“よくある非効率”を押さえ、改善の優先順位を明確にしましょう。

【よくある非効率】

  • 締め日のたびに証憑・稟議が散在して整理に時間が掛かる
  • 拠点ごとに勘定科目や運用がバラバラで連結前の勘定科目変換処理が重い
  • 入金消込・銀行明細取込・経費精算など日次作業が人手依存になっている
  • タイムゾーン/言語差により本社と海外拠点間の確認に時間がかかる
  • 監査対応に追加負荷が発生する

経理効率化の土台:5つのポイント

経理業務効率化の施策を進める際、形だけの標準ルールや新プロセスを導入しても、現場運用で十分に機能しないケースが散見されます。特によくあるのは、「全体最適を意識し標準化を推進したが、例外処理のパターンが多く、結果としてルール自体が形骸化してしまう」「新たなルールや手順が現場業務の負担増につながり、結果としてスタッフの反発や協力不足が生じる」といった事例です。

こうした事態を避けるためには、「例外ルールは明文化して管理可能な範囲に限定する」「現場部門とパイロット運用を事前に実施し、現場の意見・合意形成を充分に図ったうえで標準運用へ落とし込む」といったアプローチが有効です。標準ルールと現場ニーズのバランスを取りながら、例外処理や現場の課題も初期段階から組み込んでおくことで、効率化プロジェクトの定着率と効果を高めることができます。

このような作業の効率化は「どのツールを入れるか」よりも、「どう運用するか」を先に決めることが実現の近道です。本章では、全拠点で共通の土台となる5つ――標準プロセス、データ標準、役割分担、締めカレンダー、KPI――を明確にします。ここが固まれば、システム導入やBPO活用も迷わず進み、月次作業のばらつきと手戻りを一気に減らせます。

  • 標準プロセスの構築:伝票起票→承認→計上→照合作業の型を統一
    • 狙い:手戻りと差し戻しを減らす。
    • 決めること:起票ルール・必須証憑・承認段数・例外の扱い。
    • 実行例:用途別テンプレートを用意/金額閾値で追加承認/起票D+1・承認D+2を原則。

  • データ標準の策定:勘定科目・補助・通貨・部門コードをグローバルで構造化
    • 狙い:連結前のマッピング作業を最小化。
    • 決めること:共通科目表、補助の使い方、部門コード体系、為替レートの基準。
    • 実行例:桁ごとに意味を持たせた科目コードを使用/ローカル・グローバル間の勘定科目マッピング表を中央管理/月次レートを全拠点に配布。

  • 役割分担:海外拠点で起票、本社/BPOチームがレビュー・承認
    • 狙い:二重作業と“担当不明”をなくす。
    • 決めること:誰が入力し、誰がチェックし、誰が承認するか。
    • 実行例:海外拠点は起票と証憑整備/BPOチームは日次処理・消込・定型レポート/本社は方針と最終レビュー。時差対応のため毎日2時間の重なり時間を固定。

  • 締めカレンダーの作成:月次・四半期・年次のDayベースで共通化
    • 狙い:遅れがどこで発生しているかを見える化。
    • 決めること:「締め日=D0」として各タスクの締切。
    • 実行例:D+1起票〆/D+2承認完了/D+3調整仕訳/D+5連結提出。未処理件数は共有ボードで日次更新。

  • KPI設定:月次締め日数、未承認件数、消込完了率、仕訳自動化率など
    • 狙い:改善の優先順位と効果を明確にする。
    • 測る指標:月次締め日数、未承認件数、入金消込完了率、仕訳自動化率、差し戻し率。
    • 目標例:締めD+7→D+5/D+2で未承認0件/自動化率30%→50%。

経理業務領域別のすぐ効く打ち手

この章では、今日から実行できる「すぐ効く打ち手」を、日次/月次・四半期・年次/海外子会社管理/統制・法対応の4領域に分けて示します。狙いは、手入力や属人化を減らし、基本的な作業はルールで固定した上で、例外だけ人が確認する体制へ切り替えること。大きなシステム改修は不要です。まずは日次作業の自動化と月次作業のテンプレ化から着手し、KPIで効果を確認しながら範囲を広げましょう。

日次オペレーション

  • 銀行明細の自動取込から仕訳を自動起票
    取引先・金額範囲・メモのキーワードなどで自動化ルールを作成。手入力は禁止、例外だけ手動レビューに回します。
  • 入金消込のルール化
    消込キーを請求書番号/顧客ID/金額+日付に統一。D+1で未消込アラート、差異パターンは都度ルールへ追加。
  • 経費精算のモバイル申請+固定ワークフロー
    領収書を撮影→自動読取→部門長承認→経理確認の順で固定。差し戻し理由は定型文にして再提出を早めます。
  • 請求書受領の電子化(受領→登録→保管を一気通貫)
    専用メール・ポータルで集約し、自動登録→電子帳簿保存法対応の保管へ。ファイル名規則を設けて管理を標準化します。例:「YYYYMMDD_取引先_金額.pdf」

月次・四半期・年次

  • 決算整理仕訳のテンプレ化
    減価償却・各種引当・前払/未払などをテンプレで一括作成。金額ロジックもテンプレに埋め込みます。
  • 内訳明細の自動生成
    固定資産台帳・補助元帳から必要項目を逆算して設計。月次確定時にワンクリック出力できる状態に。
  • 連結前のデータ標準化(マッピング表のガバナンス)
    ローカル科目→グローバル科目のマッピング表にオーナーを設定。変更申請→レビュー→反映の流れを固定します。
  • 月次レポートの定型化
    為替影響/業績ブリッジ/KPIのフォーマットを固定し、D+5での提出を目安に自動出力します。

海外子会社管理

  • 言語・通貨の統一運用
    レポート表記は本社基準、為替は月次レートを一括配布。取引通貨・機能通貨・報告通貨の使い分けを明文化。
  • 海外拠点税務要件のとりまとめ
    申告用の出力フォーマット提出期限カレンダーを全拠点で共有。必要添付書類が漏れないように、チェックリストを用意します。
  • 監査対応の依頼窓口を一本化
    依頼票テンプレと保管ルール(アクセス権・タグ)を統一。やり取りはチケット化し、進捗を見える化。

統制と法対応

  • 権限と承認経路の固定(定期見直し)
    起票・承認・計上の職務分掌を明文化し、四半期ごとに棚卸し。異動時は即日で反映します。
  • 証憑の電子保存ルールの明文化
    検索キー(部門・取引先・金額)/保管年限/改ざん防止を規程化。版管理とアクセス履歴を必須に。
  • ログ可視化
    誰がいつ承認・更新したかをダッシュボードで確認。高額・例外操作にはアラート閾値を設定します。

最小の設定でルールを固定→例外だけ人が見る体制に変えると、効果が早く出ます。まずは日次の自動化と、月次のテンプレ化から着手するのがおすすめです。

経理の三層体制:海外拠点/シェアードサービスセンター(SSC)/本社の役割

「起票→標準処理→レビュー」を海外拠点/SSC(BPO)/本社の三層で分離することで、スピードと品質を両立させることができます。誰がどこまでやるか、いつまでに渡すかを固定し、属人化と手戻りを防ぐことを目指します。
ここでは、各層の役割分担の例をご紹介します。

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海外拠点

  • やること:取引の起票証憑の添付海外現地税務要件の確認
  • 締切:D+1までに起票と証憑を完了
  • 成果物:不足ゼロの伝票
  • やらないこと:承認フローのスキップ/独自テンプレの作成

SSC(社内/海外・またはBPO)

  • やること:日次標準処理入出金消込定例レポート、決算テンプレ適用
  • 締切:D+2承認完了、D+3調整仕訳・内訳確定、進捗は日次更新
  • 成果物:確定仕訳・内訳明細・ステータスボード
  • やらないこと:ポリシー変更の独断/場当たり的な例外対応

本社

  • やることポリシー策定、最終レビュー連結調整経営レポート、監査窓口
  • 締切:D+5で連結提出・レポート配信
  • 成果物:会計方針文書、連結パッケージ、マネジメントレポート
  • やらないこと:日次の手入力・個別案件の都度対応

<月次の動き方(例)>

  • D0     :締め
  • D+1 海外拠点:起票・証憑完了
  • D+2 SSC  :承認・消込90%、未承認0
  • D+3 SSC  :調整仕訳・内訳確定
  • D+4 SSC  :連結パッケージ準備
  • D+5 本社  :最終レビュー→連結提出

三層で役割と締切を固定し、ルールで回す。これだけで月次の遅延と差し戻しは大きく減ります。

ツール活用の勘所

経理業務の効率化には、ツールの活用も有効です。目的は“入力を減らし、例外だけ人が見る”こと。 ツールは入れる順番と使い方で効果が変わるため、まずは標準ルールを決め、そのルールを確実に回すためにツールを当てはめていきましょう。

クラウドERP/会計の活用:拠点とデータを一つに集約

  • 狙い:多通貨・多言語・ワークフローを同じ土台で運用。
  • 基本設定
    • マスタ統一:勘定科目・部門・取引先をグローバルで共通化
    • 承認フロー固定:金額閾値/職務分掌で自動ルートを設計
    • 締めカレンダー:D+1起票、D+2承認…をシステム上で見える化
  • 選定ポイントAPIの開放度、監査ログ、権限の細かさ(閲覧・起票・承認の分離)

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証憑のデジタル化:受領→保存→検索を一直線に設計

  • 狙い:紙やメール散在をやめ、探す時間をゼロに。
  • 基本運用
    • 受領の一本化:専用メール/ポータルに集約(CC禁止)
    • 自動登録:OCRで日付・取引先・金額を取得、伝票にひも付け
    • 保存ルール:検索キー(部門/取引先/金額/日付)、保管年限、改ざん防止を明文化
  • 実務ポイントファイル名規則例「YYYYMMDD_取引先_金額.pdf」

データ連携・自動化:データは“流れる”ように設計

  • 狙い:銀行、請求、販売データを手入力なしで取り込む。
  • つなぐ先
    • 銀行API:入出金明細→自動仕訳・自動消込へ
    • 請求プラットフォーム:発行・回収状況を会計へ自動反映
    • CRM/販売システム:売上・原価・案件IDを連携
  • 設計のコツ
    • キーの統一:請求書番号/顧客ID/案件IDを共通キーに
    • 実行頻度:日次バッチ+即時の手動トリガーを用意
    • 失敗時の行き先:エラーボックス→担当へ自動通知

ツールは“足し算”ではなく“引き算”で活用することがポイントです。手作業による入力と担当者依存の判断を減らし、例外だけ人が見る流れを作ると、すぐに効果が出ます。

経理業務効率化の進め方(5ステップ)

経理業務効率化までの道のりを5つの順番に分けるだけで、迷いなく進められます。 各ステップで「誰が・何を・いつまでに」を決め、成果物(ドキュメント)を必ず残しましょう。

1. As-Is可視化(現状を正しく見る)

  • 目的:どこで遅れ・手戻りが起きているかを把握。
  • やること:起票→承認→計上→照合の現行フロー、例外パターン、帳票/証憑の一覧化、件数・所要日数の計測。
  • 成果物:現行フローチャート、遅延マップ、課題リスト(優先度付き)。

2. To-Be設計(あるべき姿を決める)

  • 目的:全拠点で同じ“型”を使えるようにする。
  • やること:標準プロセス、役割分担(RACI)、締めカレンダー(D+1/2/…)、KPI定義を策定。
  • 成果物:標準プロセス図、RACI表、締めカレンダー、KPI定義書。

3. 標準化・マスタ整備(データの土台を作る)

  • 目的:連結前の変換や手作業を減らす。
  • やること:勘定科目表・補助・部門コードの統一、ローカル→グローバルのマッピング表作成、命名・変更ルールの明文化。
  • 成果物:グローバル科目表、マッピング表、コード規約、運用ガイド。

4. 自動化・仕組み化(ルールをシステムに埋め込む)

  • 目的:定型処理を自動化し、例外だけ人が見る状態へ。
  • やること:銀行API・請求/販売データ連携、ワークフロー設定、仕訳テンプレ・消込ルール・配賦/引当ロジックの実装、エラー処理の定義。
  • 成果物:連携仕様書、ルール一覧(If-Then)、例外キュー運用ルール、ダッシュボード。

5. 運用定着と改善(回し続けて良くする)

  • 目的:KPIで効果を確認し、継続的にボトルネックを解消。
  • やること:月次レビュー(KPI・遅延要因・例外件数)、対策の即時反映、ルールの“格上げ”、教育・引き継ぎ。
  • 成果物:月次レビュー記録、改善チケット一覧、KPI推移レポート、最新版ルール集。

最後に:実行速度を上げるなら「マルチブックアウトソーシング」

ここまでの施策を短期間で現場実装するうえで、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の活用は有力です。
マルチブックアウトソーシングは、国内外のコーポレート業務(経理/受発注/在庫/請求/固定資産・リース資産管理など)を、専任チームが代行します。SaaS(multibookプラットフォーム等)を活用する“デジタルBPO”により、業務効率化・決算早期化・内部統制の強化・経営状況の可視化はもちろんのこと、DXの推進も支援します

  • 特徴
    • 経理の日常業務の一部から、フルアウトソーシングまで柔軟に対応
    • 月次/連結決算作業・IFRS16号対応など専門性の高い業務にも対応
    • 海外拠点含む、グローバルでの代行も可能
    • 海外拠点は、multibook(クラウドERP)を活用したデジタルBPOでDXも推進
    • ご利用システム・ツールや会社の所在地は問わず代行可能
    • SSCの実現も可能
  • 導入フロー
    ご契約から最短約2ヶ月で運用開始。
    提案→契約→プロセス設計(必要に応じてmultibook導入)→Go-live→継続改善 のプロセスをマルチブックアウトソーシングが丁寧に実施します。

  • 導入後の効果例:
    • シンガポール拠点のバックオフィスを2ヶ月で立ち上げ
    • タイ拠点の月次決算・本社報告を10営業日短縮
    • 東南アジア6社の経理業務を集約し、グローバルシェアードサービス化を実現
    • IFRS16号対応を含む連結パッケージ作成プロセスをシステム化・アウトソーシング化

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まとめ

  • 「標準化→自動化→役割分担」の順で、月次の遅延・ばらつき・属人化を削減
  • 海外拠点はデータとプロセスの共通言語化が鍵
  • 速く確実に進めるなら、BPOの専任チームで運用を立ち上げるのが近道

経理業務の効率化を、国内外で短期で確実に進めるなら、BPOの活用が近道です。マルチブックアウトソーシングなら、国内外の経理の効率化・早期化・統制強化を一気通貫で支援できます。

「こんな業務も代行できるの?」「事例を知りたい」といったご質問やリクエストをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

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※本記事は、上場企業およびその連結子会社・関連会社を主な対象として、一般的な業務設計・運用の観点から分かりやすさを優先してまとめています。各社の状況により最適解は異なるため、詳細は個別にご相談ください。

この記事を書いた人

マルチブック編集部